久米さん。
先週、金スマという番組のゲストに、黒柳徹子さん、久米宏さんが出演されていました。
内容は、久米さんが出版された本『久米宏です』の副題「ニュースステーションは、ザ・ベストテンだった」を掘り下げたものでした。
久米さんは大人気だった歌番組ザ・ベストテンを降板され、1978年から18年半報道番組・ニュースステーションでキャスターを務められました。
当時、堅苦しく、分かりづらかった報道番組のイメージを久米さんは大きく変化させました。
そのニュースステーションでは、歌番組ザ・ベストテンでのノウハウがとても生かされたそうです。
ザ・ベストテンは、その当時でもぶっ飛んだ演出と徹子さんと久米さんの絶妙なテンポ良いトークが目玉でした。
歌手が新幹線のホームや飛行機から降りてタラップ下で歌ったり、ファンの家や歌手の実家前で歌ったりするなどのスリルある演出は、今のテレビでは考えられません。
また、若者が沢山観ている歌番組、徹子さんと久米さんは、もっと日本や海外で起こっていることにも関心を持って欲しいとその日その時起こっている事件や出来事を番組中の会話に意図的に散りばめていたそうです。
そんな経緯もあり、常々報道番組は未来を担う若者たちが見るべきだと考えていた久米さんは、中学生でも分かるニュース作りを念頭に報道番組の大改革をしたのです。
今の報道番組では当たり前になった、模型、政治家の人形、フリップなどを使った分かりやすい解説や事件事故の現場とスタジオを繋ぎ臨場感ある情報を伝えてもらう生中継などは、この番組から生まれたと言います。
次々と偉業を成し遂げ、視聴率が悪いことが当たり前だった報道番組を興味を持って観てもらえる番組にまで作り上げました。
そして久米さんが、18年半、4795回務め続けた番組の最終回に視聴者ヘ向けて語ったメッセージがとても印象的でした。
『民間放送は、原則としてスポンサーがないと成立しない...そう考えると民間放送というのは脆弱で弱くて危険なものなんですけど...
でも僕、民間放送が大好きというか、愛していると言ってもいいんです。
何故かというと、日本の民間放送は全て戦後に生まれました。
日本の民間放送、民放は、戦争を知りません。
国民を戦争に向かってミスリードしたという過去がないんです。
これからもそういう過去がないことを祈っています。』
2004年に久米さんが話されたメッセージが、何と無く今の日本社会、世界情勢にマッチし過ぎていて、鳥肌が立ちました。
この後のトークで、今のテレビの在り方について聞かれると、
徹子さんは『私はテレビは正直であるべきだと思っています』
久米さんは『信念に基づいて発言しないとね』と話していました。
テレビの成長をまさにその現場で目撃しながら、テレビと共に歩まれて来たお二人の発言が、どこか今のテレビや報道の在り方に警鐘を鳴らしているようにも聞こえました。
忖度、偏向報道、印象操作などの言葉をよく耳にした今年。
今テレビや報道の在り方が、作る側、観る側にも問われているように思います。
久米さんは、今のテレビ業界に、もっと生放送の番組を増やすべきだと仰っていました。
生放送が主流だった昔のテレビの内容には、 今ではあり得ないというか、やる事すらはばかれる内容も沢山ありますが、そこには人間らしさ、作り手の一生懸命さ、出演者の素の表情がにじみ出ていたことは確かです。
キレイに潔癖になり過ぎた今のテレビは、どれだけその人間臭さ、リアルさを取り戻せるのかが、テレビの未来を明るくする鍵のように感じます。
私ももちろんテレビ世代。
テレビ離れが叫ばれる今の状況に寂しさを感じます。
昔のような活気溢れるテレビの面白さを取り戻して欲しいと思う今日この頃です。