nature’s diary

日々感じていること・ボディートーク療法・心ヨガ・身体と心の話・

儚い青春。

映画『花筐/HANAGATAMI』

 

1月、あるラジオ番組にこの映画に出演されている常磐貴子さんが話されていた言葉がずっと心に残っていました。

「大林監督が私達に一生懸命伝えようとして下さっていることは、戦争の足音が聞こえる、この状況があの頃ととても似ていると仰っている。その事の怖さを知ろうよ。と言うことを凄く訴えて下さっている。そして、今を生きる人間としてその頃の事を知っている監督達がそのバトンを渡してくれているんだから、その事を後の人達に伝える渡す使命があると思っている。」と。

 

ずっと行きたいと思っていたのですが、やっと観に行くことが出来ました。


監督は、映画『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』などで知られる大林宣彦監督。

 恥ずかしながら、私にとっては今回が初めの大林監督作品でした。

 

勉強不足な私は、常盤貴子さんのお話から反戦のメッセージを感動的に描いた作品なのかなと勝手に思い描いていましたが、映画が始まりビックリ。

冒頭からぶっ飛んだ映像と次々と変化する話のテンポに、最初は付いて行くのが精一杯でした。

途中から理解しようとせず、感じてみようと思うと、芸術作品のような数々の映像と文学的なセリフが心に刺さり、時折涙している自分がいました。

 

私は、戦争体験者でもなく、近くにそれを語る人もいません。

ドキュメンタリーや映画、本などで読み聞きする程度です。

だからこそこの映画を観て良かったと思っています。

 

映画の登場人物は、戦争が自分の身に近付いていることを感じながら青春を謳歌しようともがく若者が中心ですが、随所に流れる戦時中の町の様子や悲しみにくれる家族や老人などを観ていると、等身大の私自身が重なりました。

 私には、5歳の息子がいます。

戦地へ息子や恋人が向かう場面に、お国の為と大切な息子を戦地へ送り出す母親の気持ちに、私もいつの間にかなっていました。

この時代の日本中のどれだけの母親が「お国のために産んだのではない、ただこの子を愛しずっと成長を見守りたいだけだ」と叫びたかっただろうかと。

自分の息子が青年となり、恋や結婚も経験せず、自分の力も試されないまま、死に行くのを見送るなんてとても私には出来ない。

でも当時はそうすることしか出来なかった。

本当にいびつな常識が曲がり通っていたのだと、その異常さを感じました。

 

映画の中で「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」と言う場面があり印象に残っています。

一番美しく輝き、楽しい青春時代を戦争が若者たちから奪っていきました。

そして、その輝く若さを感じることもなく戦争に捧げるのです。

 

今この瞬間の何気ない平和な時間が、とても尊いものであるのだということ。

そして、戦争をしない選択を日本はし続けるべきなのだと、戦争経験者の大林監督から強いメッセージを頂いたように感じます。

 

撮影開始直前に肺がんが発覚、余命半年を宣告された人が作った映画には、全く感じませんでした。

それどころか40数年も温めていた監督のこの映画への思いと、今の状況がリンクし、

日本が負った戦争の傷を戦後72年経った今、私たちがきちんと再認識しないといけないように感じました。 

 
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